私のミックス方法「花/中孝介」実データと共にDAWやアウトボードなどを解説!

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目次

  1. 私のミックス方法「花/中孝介」実データと共にDAWやアウトボードなどを解説!
    1. はじめに
    2. 完成品
    3. Vocal 担当チハルさん(と,その出会い)
    4. 原曲と力量の発覚
    5. DAWマシンの制作
    6. トラック詳細,奏法や音づくりの事など
      1. 1: ボーカル
      2. 2: コーラス
      3. エレキギター
      4. フラメンコギター
      5. ベース
      6. シンバル
      7. ジャンベ
      8. シンバル内蔵自作カホン
      9. 2mix(マスタリング)
      10. ミックスオートメーション
      11. バス
    7. ハードウェア機材の事など
      1. YAMAHA 01X
      2. Lexicon MX200
      3. T.C.Electronic konnekt 24D
      4. BEHRINGER Bass V-amp Pro
      5. Focusrite LiquidMix
    8. 終わりに

私のミックス方法「花/中孝介」実データと共にDAWやアウトボードなどを解説!

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はじめに

これは(そこそこガチモンの)録音プロジェクトのドキュメンタリーである.
その昔(20年以上前),4TRテープMTRにはじまり,MD MTR, 名機VS-880などを経て,私が本格的なミックスを学んだのは,音楽仲間のN君から教わったのが最初である.
N君自身は音楽学校のエンジニアの部門に通っていて,当時教鞭をとられていた元P-MODELの小西先生などから教わっていた様である.
(そのおかげで業界の裏話などが色々聞けて面白かったものだ)

昨今,2in2outのオーディオI/F がデフォルトであり,プラグインで何でも出来てしまうこの時代,センドリターンだのバスの概念だの,もはや誰も解らなくて当然である.
これは,DAWの設計がアナログミキサーの設計を元にしている為で,私の場合,ごく自然に上記のような古い機械を使っていたので,その理解に特に不自由はなかった.
今でこそMIX師なるものがもてはやされているが,この記事を読めば,誰でも自分でミックス出来る様になる…かも知れない.

完成品

SoundCloud に上げていますので,まずはコレを聞いて下さい.

Vocal 担当チハルさん(と,その出会い)

チハルさん(@chiharu_getcom)との出会いは…よく覚えていない.
多分,私がフラメンへラプロジェクトをやっていた時が最初だろう.
気が付けばごく当たり前にTLに居る人になっていた.歳が近い事もあり,マニアックな漫画やらアニメやらメタルやらの話をしたっけ.
ある時,今回の「花」をTLにうpされていたので「ギターと合わせてみたいのでボーカルトラックを下さい」と言ったら快くくれた.
が,その時は,まともなアレンジを完成させる事は出来なかった.
そのうちにHDDの奥深くへと埋もれていき,数年が経過した(ぉぃ
そして最近,別の曲をうpされていたので「また下さい」と言うと,またくれた.
さすがに,今回は完成させないと,もうくれなくなるだろうな(当たり前)と焦った.

原曲と力量の発覚

当時の失敗を踏まえて,今回はまずスタート地点から変える事にした.
はじめからアレンジをするのではなく,まず原曲ありきではじめる.
使用した原曲トラックは一発でYoutubeの動画のものである事が判明したが,DAWで重ねてみて,チハルさんの力量が発覚する事になる.
細部の音の伸ばし方とかベントの仕方とかビブラートさせる場所とか,やばいくらいに原曲そっくりである.
もはや完全にプロの犯行のレベル.

余談であるが,完成も近い頃,フルート奏者のとある音楽仲間に意見を求めた所「沖縄出身の唄い方」だと一発で見抜いてきた(チハルさんは沖縄出身で,民謡などの経験がある).
私は「原曲がそうだから,そっくりに歌ってるのだからそりゃそうなるだろう」と言ったら,違うと言う.
力の入れ方とか裏声の出し方とかに独特なものがあって,沖縄出身者にしか見られない特徴なのだと言う.そして真似しようとしても出来ないのだそうだ.
私が感心したのは,飽くまで「原曲とのそっくり加減」でしかないのだが,そこまで深いところを見抜けるとは,世の中には凄い人も居るものである.

DAWマシンの制作

プロジェクトをはじめる前に,DAWマシンの制作と実験や検証をかなり長い期間やった.
何故いまさら古いマシンに古い機材をわざわざ使うのかというと,まぁ理由は色々あるのだが

  • 単純に古い機材が好きだから
  • 古い音楽はその時代の機材でやるべきだから
  • プログレードの機材は年月が経たないと庶民の手に届く値段まで降りてこないから(中古)

などだろう.

システムとしては,Windows XP(32bit),Windows 7(32bit),Windows 10(64bit) をそれぞれ120GBのSSDにインストール.
さらにそれらを複数のマシンで実行,複数のI/Fやバージョン違いのドライバ,複数のDAWでの安定試験や検証を繰り返す.
システムもドライバもDAWもプラグインも,もはや完全に過去の遺物であり,言ってみればメーカーがサポートを投げ出したものなので,そこら中にバグや不具合が放置されており,それらを安定して利用可能にする為には,相当な試行錯誤があった.
再インストールや面倒な作業が頻発するレベルの深い(不快)実験ばかりになってしまい,正攻法では埒があかない為,1TBのディスクにそれぞれのDDイメージを吐き出し,破壊されたシステムを比較的簡単にロールバック出来る環境を整えた.
効率的な探索の為には,この環境の構築は絶対必須であった.
最終的に,IEEE1394カード3枚刺し,Windows7(32bit)レガシーモードドライバにて,01X, LiquidMix,konnekt24D,Lexicon MX200,Waves プラグインなど,全てをロードする事に成功する.
3枚差しの為に,(過去のインターフェイスである)PCIスロットが複数必要になり,最初はライザーカードの使用などのアプローチを試みたが,結局 M/B 自体を変更,DAWマシンそのものを作り直す事となった.
しかし,苦労した事もあって多くの事実が判明,所有機材への理解が深まり,そこそこ快適な環境となった.
私にとっての「当時モノ」ドリームマシンである(笑).
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トラック詳細,奏法や音づくりの事など

トラック状況のスクリーンショット.
半分くらいミュートされているのは,カホンとジャンベを切り替えて「パーカス奏者一人で叩けるアレンジ」としたから.
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各トラックの詳細を以下に記す.
注釈:

  • LPF(ローパスフィルター): 一定以上の周波数をカットし,低域のみを残す.
  • HPF(ハイパスフィルター): 一定以下の周波数をカットし,高域のみを残す.

1: ボーカル

これは,送られてきた時点ですでに音質的にもある程度の完成はしていたが,オリジナルにはノイズがまったくないのに,どうゆう訳かプラグインを通すとノイズだらけになった.
しょうがないのでオリジナルのHIをLPFでばっさり削除してから処理する事となった.
最後の最後まで,使用するプロセッサに悩み抜いた.
完成も近い頃,チハルさんが「ボーカルの荒が目立って録り直したい」と言っていた.
音楽とゆうのは,本人しか気付かない事ばかりである.私としては十分な完成度だと思っていたので「???」だったのだが.
しかし,連日の作業でこの曲ばかり聞いていると「こうだったら良いのになぁ」という所が,どうやら私にも理解出来る様になってきた.
それは,音量や音程,ビブラートの掛かる場所など,全てが正しくても,力の入り方,音の減衰の仕方など「あるべきエネルギーの流れ」に違和感があるのだと気付いた.
それでダイナミクス処理の方向性を見直して,(原点に戻って)「音を作る」とゆう考えを捨て去り,LiquidMix でのサチュレーションを諦め,Fabrik C での処理とした.
その他,メロディ的な修正などはまったく必要なく,無音部分の削除しかしていない.

使用プラグイン:

  • Tr1: chiharu
    • (VST) YAMAHA 01X channel module(LPF: 4.25KHz)(ノイズ対策)
    • (DSP) T.C.Electronic Fabrik C

2: コーラス

コーラスを掛けたいパートを部分的にボーカルトラックからコピーして,YAMAHA Pitch Fix プラグインにて5度のハモリを加えたもの.
元の音程が完璧なので,ハモリの生成に問題が生じる事もなく,本当にコピーしただけな感じ.

こんな感じ.

使用プラグイン:

  • Tr2: chorus
    • (VST) YAMAHA Pitch Fix
    • (DSP) Focusrite LiquidMix(Copy Cat: US Modern Copy Cat / Class A2: Brit 70’s Class A2 EQ)
    • (VST) YAMAHA 01X channel module(HPF:375Hz LPF: 4KHz)

エレキギター

自作ギター「フェニックス01」はジャンボフレットのスキャロップ仕様であり,テンションはユルユル,ストラトのトレモロ・ユニットと相まって,安定しない音程感が特徴である.
豊富な回路バリエーションを駆使し,直列フェイズアウトなどで特徴的な音を作っている.これがメタル時代に最終的に行き着いた「私のエレキギターの音」である.
ギター内蔵のZ.Vex Super Hard On ブースターに,マルチストンプのチューブスクリーマーを二重掛けで録り,若干の変更余地を残すため,プラグインで Waves のアンプシミュを後掛けした.
スライドからのスウィープなど,子供騙しのメタル技を使っているが,奏法的には特に難しい事はしていない.そもそも倍音お化けのエレキギターなんぞ「鳴ってりゃ良い」程度の認識である.
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ソロで再生.外部ミキサーに送っている関係上,Lチャンネルに偏っている.

使用エフェクト:

  • Tr3: E.G.
    • (DSP) ZOOM MS-50G W screemer
    • (VST) Waves GTR Guitar Amp Mono

フラメンコギター

上方と下方から二本のマイクで録っている.
ミックスの時点で,基本的に上方からのマイクの音を使う事とし,下方からのトラックは基本ミュート,際立たせたいパートだけオンにしている.
奏法的にはベース弦アポヤンドのアルペジオ,ルンバフラメンカ,若干のトレモロなど,やってる事はフラメンへラプロジェクトと同じであり,通しで2テイクほど録っただけであっさり完成した.
私のプライマリ楽器なので,さすがにここで躓いている様では,このプロジェクト自体が実現不可能であろう.
録音自体よりもむしろ,どこにカポをして,どのポジションで弾けば最大の効果を得られるか,とゆう考察に時間を費やした.
ピカードやアルサプーアなどの派手なフラメンコ技はアレンジ的に入れる余地がなかった.
肝心の音自体は,あまり気に入っていない.フラメンコギターの場合「エフェクトで音を作る」とゆう考え自体がナンセンスで,弦と爪と木だけでフラメンコギターの音を作らなければならず,繊細なニュアンスが全て音に現れ,一切の誤魔化しが出来ない楽器である.
この為「日本にはフラメンコギターを録れるエンジニアは居ない」とまで言われている.

トレモロパート.これは逆に右に偏っているが.

使用プラグイン:

  • Tr4: fla.T
    • (DSP) Focusrite LiquidMix(Viking1: Danish Classic Tube 1 / Class A2: Brit 70’s Class A2 EQ)
  • Tr5: fla.B
    • なし

ベース

これは,せっかく買ったのだからまぁ使うかという程度の考えから,一番最後に録音する事になった.
しかし,私が弾けるのはスラッピングのみで,まともなアレンジをでっちあげるには,技術不足である事が判明する.
いやアポヤンドの2フィンガー奏法自体は技術的にはピカードよりも簡単なのだが,そうゆう意味ではなく,本職の6弦ベーシストが考えた様なウォームで流麗なパートを作る事が出来ない,とゆう意味である.
非常に時間を費やしたものの,出来上がりは並であると思う.
音色は,鳴ってれば別になんでも一緒なので,プラグインの SansAmp もどきでも良かったが,Bass V-AMP Pro の適当なプリセットを使った.単に,少し前に買って持っていたからという理由である.
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使用エフェクト:

  • Tr6: bass
    • (DSP) BEHRINGER Bass V-AMP Pro(Fusion Bass: British Hi Gain + SWR 1×18" + Chorus FX)

シンバル

複数のシンバルの音が鳴っている様に聞こえるかも知れないが,全て「スプラッシュ一枚から叩く場所を変えて」出した音である.
使用したスティックは竹ひごのロッズである.
後述のカホンにも内蔵シンバルの音が入っているので,このトラックは「ジャンベの時」のHIを補完する意味で,ジャンベが鳴っている時のみ同調して刻みで鳴っているトラック.

使用プラグイン:

  • Tr7: cymbals
    • (VST) YAMAHA 01X channel module(HPF:6.7KHz)
    • (DSP) Focusrite LiquidMix(Viking1: Danish Classic Tube 1 / Class A2: Brit 70’s Class A2 EQ)

ジャンベ

最初の「Beta1アレンジ」では基本フラメンコギターとジャンベのみ,若干のEギターが入っている程度だった(しかし,一番完成に近かった).
フラメンへラプロジェクトではそれが「完成した私の音」だった訳で,ジャンベは後述のカホンと違い,幾ら叩いてもフラメンコギターの音とはぶつからないのが利点である.
ジャンベはドラムセットなどと違い,叩く場所と叩き方によって様々な音が出せる,それ単体のみで「完成された楽器」であるが,アフリカ製の本物の大人用ジャンベを家庭内で運用する事は音量的に絶対不可能である.
ファイバースキンとアニマルスキンがあり,私のものはなめし革のアニマルスキンで,中間くらいの音がする.縦紐は破断張力980kgの登山用ロープに換えてある.
これも,上方と下方から二本のマイクで狙っているが,基本上からのトラックをメインに使用する事になった.
ジャンベパートとカホンパートは交互に出現しており,一人のパーカッション奏者が叩き分けて演奏出来るアレンジとしたが,上記のシンバルトラックはジャンベと同時に一人では演奏出来ないので,そこは例外である.
とは言え,足でシンバルを操作出来る装置を自作すれば可能だし,実際フラメンへラではタンバリンを足で踏んでいたので,別にそれでも良かった.
ソロパートでは別の太鼓が鳴っている様に聞こえるかも知れないが,片手で打面をミュートしてスラップで叩くとあの様な甲高いこもった様な音が出る.
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ジャンベ+シンバル.

使用プラグイン:

  • Tr8: djembe.T
    • (DSP) Focusrite LiquidMix(FF ISA 130: Focusrite Classic ISA130 / Brit Desk5: Brit Modern Desk3 EQ)
  • Tr9: djembe.B
    • (DSP) Focusrite LiquidMix(Copy Cat: US Modern Copy Cat / EQ なし)
    • (VST) YAMAHA 01X channel module(Compander H / LPF: 150Hz)

シンバル内蔵自作カホン

シンバル内蔵自作カホンを使って「Beta1:フラメンへラサウンド」からさらにアレンジを進める為に最初に追加したトラック.
基本パラディドルで刻み,カバサでハイハットのオープンとクローズの音を,ヒールアンドトゥでキックのダブルを再現している.
打面側とリアのサウンドホール付近にマイクを立てており,Compander(コンプレッサー+エキスパンダー)によるゲート処理により,サスティンをコントロールしてキックの音を再現している.

カホントラックだけを再生するとこんな感じ.全体ミックスの設定なのでエフェクトは深く掛かっている.

二本の手だけでこれだけ音数が出せれば上等だろう(笑).
私のシンバル内蔵カホンがあれば,宅録にドラムセットは必要ない.
なお,スネアに相当する音を定位させていないのは,フラメンコギターのルンバフラメンカ奏法でのボディ叩き音とぶつかるからである.
こんなマニアックなカホンを自作しておきながら,自分の演奏では殆ど使わないのは,この問題のせいである.

使用エフェクト:

  • Tr10: cajon.F
    • (VST) YAMAHA 01X channel module(HPF:250Hz, UP:400Hz DOWN:1.8KHz H.SHELF:2.12KHZ)
  • Tr11: cajon.R
    • (VST) YAMAHA 01X channel module(Compander S / 425~1.25KHz 全カット)
    • (DSP) Focusrite LiquidMix(Viking1: Danish Classic Tube 1 / EQ なし)

2mix(マスタリング)

これも,最後まで悩んだ.
光明を見出したのは,T.C.Electronic Assimilator の存在をふと思い出した事からである.
これは,リファレンスとなる原曲のオーディオファイルと,ターゲットとなる自作のオーディオファイルをそれぞれ解析,学習し,その差分を補完するEQ設定を自動的に導き出してくれるプラグインである.
Assimilator の使用により,私の最終ミックスにはローもハイも全然足りていない事が判明する.
Assimilator を深く掛けるだけでも解決するが,深いEQ処理は好ましくないので,ミックス自体をやり直し,最終的に Assimilator の処理はほぼ必要のないレベルにまで改善する事が出来た.
なお,最終吐き出し時には Waves L3 Ultramaximaizer を使用している.
トータルコンプも非常に悩ましく,様々なものを試したが,結局 L3 に落ち着いた.
もしハードウェア機材を買い足すとしたら,ちょっとマシなステレオコンプは欲しいものリストの中ではかなり優先度の高いアイテムだと言えるだろう.

使用エフェクト:

  • Tr13: 2mix
    • (VST) T.C.Electronic Assimilator
    • (VST) Waves L3 Ultramaximaizer

スクリーンショット.
左上から順に,Focusrite LiquidMix,YAMAHA Pitch fix(コーラス生成),Waves V-comp(パーカスサブミックスのバスコンプ),
01X channel module(カホン打面側マイクのEQ設定),Waves IR-L コンボリューションリバーブ(パーカスの空間系として使用),T.C.Electronic Assimilator(原曲と自前ミックスを解析し,差分EQをグラフ化したところ).
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ミックスオートメーション

使用していない.
が,本来は使用するべきである.昔はボーカルの聞き取りにくいところなどを手動でフェーダー操作で音量を上げたものだ.
使用していない理由だが,面倒だというのもあるが「全体を通して,基本的にミックスオートメーションを必要としないレベルまで,ミックス(及びアレンジ)を煮詰めるべきである」とゆう考えによる.
この縛りのせいで不必要に時間を取られている気もするが,一見無駄に思えるその作業時間があるからこそ,最終的に完成度があがるものだと思っている.
また,早い段階でオートメーションを書いてしまうと,後々の変更が利かず,破綻してしまう事も多い.
これに頼りすぎると余計に自由度が下がるので,個人的にはあまり好みではない.
余談であるが,打ち込み(MIDI)も使用していない.全てが実際の演奏である.

バス

二つのエフェクトセンドバスを作成している.
リバーブ: Waves IR-L コンボリューションリバーブ
ディレイ: SONAR 標準のディレイ(左右定位用のバスで,後述のショートディレイと目的は同じ)

また,シンバル,ジャンベ,カホンのサブミックスバスを作成しており,バスコンプとして Waves V-comp を使用している.
実のところ,上記のリバーブセンド,ディレイセンドはこれらのパーカス専用であり,その他のトラックについては,01X と Lexicon MX200 によるハードウェアにて空間を処理している.

ハードウェア機材の事など

YAMAHA 01X

上記のバスは,DAWのマスターバスに出力している訳ではなく,01Xのステレオチャンネルに立ち上げている.
その他のトラックについても同様で,それぞれを個別に01Xのトラックに立ち上げ,ハードウェアにて処理を行っている.
特にEギター,ベースについては EQ 処理もハードウェアで行っている.
(その他のトラックについては,LiquidMix を使用している関係上,01Xによる音作りの必要性がなかった)
なお,各所に登場している 01X channel module は 01X のチャンネルストリップが VST プラグイン化されたもので,VST版とハード版の使い分けは,VST版は基本的に HPFやLPFとして前処理で利用している.
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空間系エフェクトは

  • Aux3: Reverb Hall
  • Aux4: Delay LCR( L:6.5ms C:0 R:30ms)

を利用している.
このディレイは,左右でディレイタイムの違うショートディレイを設定したバスにプリフェーダーで送る事で音が左右からのみ聞こえる様になり,真ん中の定位がすっぽり空になるものである.
最初にN君からミックスを教わった20年前からやっている処理だが,最近は MS処理などと呼ばれているものの類である.

01X Editor のスクリーンショット.
mL1: ボーカル, mL2: コーラス,mL3: Eギター,mL4: フラメンコギター, mL5: ベース,ml7-8: パーカスサブミックス.
コーラス,Eギター,フラメンコギターのフェーダーレベルが低いのは,左右定位の為,プリフェーダーでディレイに送っているから.
右上はそのディレイの設定.
右下はEギターのEQ,左下はパッチベイの設定で,ステレオメインバスを mLan1-2 OUT に設定し,ハードウェアミックスを再びDAWに送り返している.
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DAW 本体でミックス出来るのに,何故ハードのミキサーを使うのかと言うと,音の分離がハンパなく,音像感,解像感が素晴らしいから.これは「全然違う」と言ってよいレベルだと思う.
なお,DAW のみでミックスを完成させてしまったのち,そのまま各トラックをパラでミキサーの各チャンネルに出力し,ミキサー側はユニティ・ゲインで使うとゆうのもアリだと思う.恐らくそれでも十分な効果が見込めると思われる.
とゆうか,DAW での音作りと親和性があり,見通しがよく,アナログミキサーでもリコールが可能である点などを考えると,むしろその様に利用するべきかも知れない.
最近はこれ専用の機材としてサミング・ミキサーやサミング・アンプとゆうものが流行で,Tubetech や SSL などからも超高価な専用機が発売されているが,アナログ機器に関しては,性能うんぬんより好き嫌いだと思うので,ある程度のクオリティのものであれば,別に何でも良いと思う.
私はその昔,MACKIE のユーザーだったので,いずれ当時ものの MACKIE によるサミングに移行しようと考えている.

Lexicon MX200

これを購入したのは,10年程前に使っていて,良いものだと知っていたから.
当時手放した時とほぼ同じ値段で購入した.良いものは相場も変わらない.
後述の V-AMP同様,PCからの遠隔操作が可能であるが .net framework が必要なので,Windows10ではまずそれをインストールしなければならない.
(しかし,OSがタコなので「機能のオンオフ」だけでは入らず,オフラインインストーラーをダウンロードしてもネットを見に行くなど,馬鹿な挙動の連続で,たかがライブラリのインストールに恐ろしく苦労した)

01X とは S/P DIF で接続しており,デジタル・ドメインでのアクセスが可能である.
ルーティング設定は「Mono Split」で,モノラル2系統(出力はステレオで2系統がミックスされる)として利用している.

  • Aux1: Small Hall
  • Aux2: Studio Delay

これは,メインのリバーブがホール・プリセットなどの時に,リバーブ感は欲しいが,ボワボワさせたくない場合など,別のリバーブとしてルーム・プリセットなどが利用出来ると便利だから.
つまり,01X内蔵エフェクトと合わせて,4つの空間系センドを立ち上げている(パーカスサブミックスのIR-LとSONAR標準ディレイを合わせると6つ).
複数の空間系を使用する事で,複雑な音像を生み出すという狙いもある.
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T.C.Electronic konnekt 24D

オーディオI/Fだが,今回はオーディオI/Fとしては利用しておらず,内蔵DSPをVSTプラグインから利用している.
Fabrik C, Fabrik R はそれぞれボーカル用チャンネルストリップとリバーブである.
が,ユーザーインターフェースが特殊で,通常のコンプであれば当たり前に存在するパラメーター(Threshold やRatio)はなく,アイコンを直感的にドラッグ操作する事により,内部パラメーターは自動的に決定される.
音作りの幅は広いが,品質はそう悪くない.むしろこれだけの音の変化を出しながらここまでナチュラルなのは高性能だと思う.
(それもそのはず,T.C.Powercore の有料プラグインであった頃はこの二つで10万くらいしていた様だ)

マスタリングで使用した Assimilator もこいつの機能.とゆうか,オリジナルの Assimilator は本来はT.C.Powercore専用の有料ハードウェアプラグインであったが,konnekt24D 版 Assimilator はソフトウェアプラグイン化されており,VST として動作する.が,konnekt24D 自体をドングルとして利用しており,ハードウェアが接続されていなければ動作しない,というややこしい仕様である.

先述の通り,Fabrik C はボーカルトラックに使用,Fabrik R をパーカスの空間系に適用しようとかなり試行錯誤したが,Waves IR-L のほうがしっくりくるものがあったので不採用.

なお,現在は入出力を増やす為, konnekt 8 を一台カスケード接続している(アナログサミング環境構築の準備).
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BEHRINGER Bass V-amp Pro

これはベース用アンプシミュレーターだが,キーボードなどでも汎用的に利用出来る.
昔ギター版を使っていて,そこそこ使えたから今回も(ベース版を)購入した.
PC から遠隔操作出来るソフトが付属する.これが秀逸なので使っているとも言う.
余談だが,購入直後に壊れ,メイン基板を載せ替えたのは以前書いた通りである.

スクリーンショット.
BEHRINGER V-Amp Editor, Lexicon MX-200 Editor, T.C.Electronic Fabrik C DSP プラグイン操作画面などを動かしているところ.
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Focusrite LiquidMix

これは別ページにも書いたが「見つけたら絶対買え!」と断言したくなる機材である.
実機からサンプリングした波形データを元に,ダイナミックコンボリューションと呼ばれる技術で,ハイエンドでビンテージな各種コンプとEQの挙動をエミュレーションしている.
ほぼ全てのトラックは,基本的にこれをチャンネルストリップとして音作りをはじめている.
ちなみに,Windows 7(32bit)でも,1394アダプタのドライバはレガシーモードでないと動かない.
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終わりに

昨今,アマチュアの世界でも高価なマイクプリアンプやアナログコンプが使われている.
しかし,その様な高級機に通している音とゆうのが,エレキのピック弾きだったりして「やっぱり違う」と悦に浸っているから失笑モノである.
高けりゃ良いとでも思っているのだろうか?「業界の基準とやらに影響されずに,もっと別のところに,自分だけの基準を持てよ」と言いたい.
本職のエンジニアが何十万もする最新の機材を使用しているのは「音の価値観を更新する為」だけが目的であり,メーカーの回し者だからである.

私の様にジャンクな自作楽器や古い中古エフェクターなどしか認めない,とゆうのはやりすぎかも知れないが,古いから使えないという事はなく,そう極端に劣っているという訳でもない.
とゆうか,やれ UAD2 だの Protools だの言ってみた所で,やってる事は「古いビンテージ機材の再現」なのだから笑ってしまう.

言える事としては,録りの段階で太い音で録っておけば,プラグインであとからどうにでもなるので,アウトボード機材はアナログコンプだけで十分かも知れない.
現実的には,その入出力であるマイクプリとオーディオI/Fも必要になるが,¥を掛けるのはそれだけであとはプラグインで十分だろう.

YAMAHA 01X は私にとって,マイクプリであり,チャンネルコンプであり,メインの空間系エフェクターであり,サミングミキサーでもあるが,二十年近くも前の機械にも関わらず,今でも使えているのは「飽くまで原音通り」の設計上の明確な基準があったO2Rの血統を受け継いでいるからだと思っている.
恐らくO2Rは世界一有名なデジタルミキサーで,(デジタルミキサーそのものを否定する老害アナログ爺は別として)その性能に異論を挟む人はまず居ないだろう.
(まぁメーカーには色々と言いたい文句はあるのだが)

なお,YAMAHAの現行製品(01V96iなど)は,ミキサー内部で専用プラグインが動いてビンテージ機器の再現が出来る様になっている.これも業界の流れと言えるが,デジタル部の作りは基本的に当時から変わっていない.
コンソールとは汎用であるべきで,私としてはその様な機能はミキサーに実装する必要はないと思っている.

まとめると,要は別に最新機種でも,高価な機材である必要もない.結局のところは自分が好きな楽器で好きな音でやれば良いのである.

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書いた人

me 小津雪ヲ: 生きるとゆう事は,雑多な問題に対処するとゆう事.
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日常の様々な創意工夫やお役立ち情報を発信しています.

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